フィンランドのライフスタイル展:暮らしを豊かにするアアルトの家具

ひろしま美術館で開催されていた「フィンランドのライフスタイル」展の最終日に駆け込みました。
会場には、フィンランドが誇るデザイナーたちが手掛けた家具、陶器、ガラス製品、そしてテキスタイルがずらりと並んでいて、北欧の美しい暮らしの一部が空間が広がっていました。

その中で、やはり私の目を引いたのはアルヴァ・アアルトがデザインした家具たち。
フィンランドを代表する建築家であり、デザイナーでもあるアアルト先生の存在感は圧倒的です。
展示された家具の多くは、彼が設計した建築のために作られたもの。家具が建物に従属するのではなく、建築と家具が一体となり、空間全体が調和を目指しているようです

1998年にフィンランドを
南から北まで建築を見てまわった
(今のように北欧のライフスタイルが注目されていなかった時代)
フィンランディアホールの青い木の壁を見て
木とデザインと建物の可能性・親和性を感じて帰りました

改めてアアルト先生の住宅雑誌を読み返すと、展示にあった家具たちがさりげなく配置されている写真が目に留まりました。それらの家具は「家についている」ものではなく、「人についている」もののように感じられます。つまり、特定の場所だけでなく、どんな空間にも馴染み、使う人に寄り添うようなデザイン。それがアアルトの家具の特徴なのでしょう。

その理由のひとつは、フィンランドの自然が生み出した素材と技術にあります。
フィンランドバーチ(白樺材)を使い、曲木の技術で作られたシンプルなラインの家具たち。
その形状は無駄を省きながらも優雅で、どこか温もりを感じさせます。
そして、それが人々の生活にしっくりと馴染み、日常を豊かにする力を持っているのです。
この展示を通して、デザインが持つ本当の意味について改めて考えさせられました。
デザインとは見た目の美しさだけではなく、人の暮らしをより豊かにするための「形」なのだと。そして、それが空間全体の調和の中でどれほど大切な役割を果たすのかを実感しました。
フィンランドのライフスタイルから学ぶことは、私たちの設計にも多くのヒントを与えてくれます。
空間と家具、人との調和――これをどのようにデザインに生かすかが、私たち設計事務所の次の課題でもあり、楽しみでもあります