木目プリントは”なんちゃって”ではない? デザインの慣れとは

木目プリントが使われる理由について、考えたことはありますか?
最近、私もその理由に気づいたので、少しお話ししてみようと思います。
よく見かけるのが、木目の模様がプリントされたシート。
実際の木ではなく、木目がデザインされたシートが使われているのを、日常的に目にしますよね。
では、なぜこの素材が選ばれているのでしょうか?単色のシートでも良いのではないか、と疑問に思っていたこともありました。

その答えは、「新しい素材に対する抵抗を減らすため」。
昔、木の床が一般的だった時代、次第に薄い木の板を張った「突板床板」が登場し、今ではシートが主流になってきました。この変化に驚くかもしれませんが、シート張りでも、木目のデザインを採用する理由は、実はとてもシンプルです。それは、私たちが無意識に「木の質感」を求めているから。
木目の模様を使うことで、**「自然な温かみ」や、「落ち着いた雰囲気」**を作り出し、部屋に心地よさを与えることができるのです。これが、木目プリントがいまだに人気の理由だと気づきました。デザインの慣習が、時間をかけて私たちの生活に馴染み、心地よいものとして根付いているのです。
たとえば、コンクリート打放しのような壁紙や、タイルのようなサイディング材も、時に「なんちゃってデザイン」と言われることがありますが、木目プリントはただの模倣ではなく、視覚的な安定感を与えてくれます。それを無視して、素材について考えずに家を購入するのは、視覚的な慣れがあまりにも大きく影響しているからかもしれません。

ところで、触感で選ぶことが少なくなった現代。
かつては木の床の温もりを感じることが大切でしたが、今ではその感覚が薄れてきています。
私は実家の2階の床をリノベーションする際、DIYで15ミリ厚のウォールナットの床板を張り替えました。
この木材は、硬さがあり、家具を置いても丈夫で、傷がついても気になりません。
実家が新築された昭和43年頃のフローリングは、突板が張られたデザインで、当時はとても新しいスタイルでした。今では珍しくなったデザインですが、50年以上経った現在、ところどころ剥がれてきています。

家や建築を考えるとき、素材選びやデザインの背後にある意図に気づくことが大切です。
木目プリントのシートが選ばれる理由も含めて、私たちの暮らしにどんなデザインがフィットするのか、少し立ち止まって考える時間を持ってみるのも良いかもしれません。
素材が持つ力、そしてそれがどのように空間を豊かにしていくのかを、私たち設計事務所としても常に追求しています。