建物を読む 児島洋紙ビル(福岡市博多区)
博多の朝、まちを歩く
博多に泊まった朝。
中洲から福岡港へ向かって歩いていると、一棟のビルに足が止まりました。
周囲には新しい高層ビルが建ち並び、この建物だけが静かに時間を重ねています。
古い建物だから目に留まったわけではありません。
そのデザインに惹かれました。
遠くから建物を読む
まずは少し離れた場所から建物全体を眺めます。
最初に読み取れるのは、水平と垂直のラインです。
クリーム色の帯が水平を
柱型が垂直をつくり
茶色いスクラッチタイルがその間をつないでいます。
派手な装飾はありません。
それでも建物全体に心地よいリズムがあって
思わず近づいて見たくなります。
近づいて建物を読む
近づくと、さらにこの建物の魅力が見えてきます。
スクラッチタイルは、ただ平らに張られているのではなく、
細かな凹凸によって光と影をつくり、外壁に豊かな表情を与えています。
窓まわりのデザインも印象的でした。
縦の格子ラインだけを強調するのではなく、
窓枠の白を横へと連続して見せることで、建物全体の水平性をより際立たせています。
庇や軒も同じ考え方でデザインされ、水平の線が建物全体の印象を整えています。
まるで詩人が一つの助詞を選ぶように、一本一本の線が丁寧に選ばれているように感じました。
洋服や家具、プロダクトなど、デザインを見ることが好きな人であれば、
この建物の美しさにきっと気づくと思います。
細部を読む
さらに目を向けると、足元の納まりや角のタイル割付まで丁寧に考えられていることが分かります。
建物は、こうした細部の積み重ねによって全体の美しさが生まれます。
ミース・ファン・デル・ローエの
「神は細部に宿る」
という言葉を思い出しました。
この建物もまた、その言葉を静かに語りかけてくるようでした。
建物を読むということ
帰ってから調べると、この建物は天野太郎の設計でした。
フランク・ロイド・ライトやアルヴァ・アアルトの影響を受けた建築家と知り
私の好きな建築につながる一棟だったことをうれしく思いました。
でも、一番うれしかったのは、その名前を知る前に、この建物の魅力に気づけたことです。
建物には、設計者の思いや時代の空気が、静かな気配として残っています。
建物を読む人が増えること。
それは、まちの価値を見つける人が増えることなのだと思います。
その気配に気づける人が一人でも増えるように
これからも建物を読み、このブログに書いていけたらと思います。