先日見つけた線は、ライ麦でした。
コロナ禍の少し前、
麦畑をはじめました。
古民家の再生をさせていただいた家の
畑をお借りして、気まぐれにはじめた
麦づくりです。
当時のパートナーがパンを焼いていたので、
麦から育ててみよう。
そんなことを思ったのが、
はじまりでした。
麦とライ麦を植えました。
そこは鹿の多い場所で、
ライ麦は見事に全滅。
全部、食べられてしまいました。
それでも麦を育てることがおもしろくなり、
今度は事務所の近くで
畑を借りようと思いました。
借りる気満々で、近所を歩きました。
畑を見つけては、ここはどうだろう。
あそこはどうだろうと眺める日々。
そんなことを続けていると、
事務所から歩いて5分ほどの場所で、
畑を貸していただけることになりました。
畑をはじめるとき、
まず地面に線を引きました。
種を植えるための線です。
その線にそって種をまき、
私たちの麦畑がはじまりました。
その畑を借りて間もなく、2020年。
新型コロナの感染が広がり、
家からあまり出かけることのできない
日々がはじまりました。
そんななか、私たちは麦を育てました。
種をまき、土に触れ、
育つのを待ち、刈る。
麦のある暮らしを、
4年ほど続けました。
春になると、麦畑はとてもきれいな
緑に包まれます。
この風景を、
みなさんにも見ていただきたい。
5月のゴールデンウィークに、
「麦畑でパンを食べよう」という
イベントをはじめました。
麦畑に、パントリップ。
近所の方が来てくださり、
知り合いが友達を連れてきてくれました。
麦畑のなかで、パンを食べる。
ただ、それだけのイベントです。
その麦畑で、
おめぐさんと知り合いました。
話をしてみると、おめぐさんも
麦を育てていました。
今回訪ねた園に子どもを通わせる
お母さんたちと一緒に、
麦を育てていたそうです。
イベントでは、いつもビスコッティを
たくさん買ってくださいました。
どうやら、みなさんにも
食べていただいていたようです。
でも私は、ライ麦の茎のきれいさが
ずっと気になっていました。
細く、まっすぐに伸びる茎。
捨てるのがもったいなくて、
刈り取ったあとも取っておきました。
ヒンメリをつくったり、
馬をつくったり。
事務所の壁を、ライ麦で
仕上げてみたこともありました。
茅葺屋根の見学会に行ったときには、
麦藁を軒に近いところの化粧に
使うことがあると聞きました。
建築にも使えるんだ。
いつか、麦を建築に使ってみたい。
そんなことも思うようになりました。
とはいえ、手元には大量の
ライ麦の茎があります。
きれいだから、捨てたくない。
でも、どう保存するのか。
何に使うのか。
大量の茎を前に、
少し困っていました。
そんなとき、おめぐさんを通じて、
麦を育てていたお母さんたちのもとへ、
ライ麦の茎が渡りました。
それから、数年。
先日、そのつながりから
「認定こども園さざなみ森」を見せていただきました。
木をふんだんに使い、
自然の素材がいろいろ使われ
子ども立ちがつかう家具はそこの大工さんの手づくりという
とても素敵な建物でした。
また園庭は山のあり方をできるだけ残して。
窓からは里山の風景が見えるように工夫されていました。
そんな園を見てまわり
建物のなかを歩き、
ホールに入りました。
ふと、見上げると、
ヒンメリが掛かっていました。
「あ。」
私が育てた、ライ麦でした。
畑で育ったライ麦が、
人の手に渡り、かたちを変えていました。
そして、木や自然の素材に囲まれた
建築のなかで、光を受けていました。
麦を育てた。
茎がきれいだと思った。
捨てずに残した。
人に渡した。
そして数年後、建築のなかで
また出会いました。
先日見つけた一本の線。
ライ麦でした。