手刻みでの家つくり|手仕事と時間の流れ
Peatixアプリから流れてきた
「手刻み同好会のKorekara会議」にリモートで参加させていただきました
設計者、構造設計者、施工者、建て主、大工さん
それぞれの立場から語られる「手刻み」という熱い言葉を聞いているうちに
これまでレフトハンズが設計してきた家々のことがふと蘇りました
「手刻みの仕事していたんだな」
「手刻みの仕事で木造のルールみたいなものを学ばせていただいたな」
これからの時代、建て主さんが「手刻み」の選択肢を知る機会はどんどん少なくなります
手刻みできる大工さんの数も減っているのが現状としてあります
そんな中、今回の会議を聴講させていただいたことから
いくつか思うことを書いてみたいと思います

1. 「手刻み」とは何か
木の家を建てるには、梁や柱といった構造体が必要です
これらの部材を接合によって家の骨組みが形成されます
「日本の木造建築は金物を使わない」と言われていますが
実際に接合部は木だけで組むことができます
大工さんは、図面を見ながらどこにどの材料を使うか
またその木材の性質を見極め、接合部を手で加工する
そのプロセスこそが「手刻み」と呼ばれる作業です
最近は機械によるプレカットが主流となりました
接合部は金物が使われ、継ぎ手もあらかじめ決められた種類のものだけです
手刻みは、人の手で 知恵で これからの素材の変化を見極めて
木本来の素性をいかす 長年をかけてできあがってきた日本の宝物です。
(photo:間野平の家具工房)

2. 「手刻み」を他の業界で例えると
会議中に手刻みを別の業界に例えてお話がありました
本出版の業界のはなしですが
アナログの本とデジタルが共存している
ゆっくりと思考しながら読む時はアナログの本という媒体が良さそうです
私の仕事では、建築の設計においても
手書きとCADが共存しています
間取りやアイディア考えるときは スケッチ程度の手書きです
考えたものを共有したり、つくり手に伝えるにはCADのデータは効率的です

3. 私の最初に設計した家は「手刻み」の家
2000年に最初に設計した家は、構造図を書いて、木造に詳しい現場監督さんに施工管理をしていただきました
当時はまだ構造部材については考えていましたが、仕口や金物のことまで十分に考えられてなかったのです
世の中にはまだ「手刻み」の技術がふつうにあり、現場で勉強させてもらいました
2009年頃までは「手刻み」「構造体のあらわし」の木の家を何件か新築させていただき
その間に現場監督さんから木の架構の勉強をさせていただき、ひと通り指示できるようになりました
そこからプレカットと手刻みをうまく併用して新築設計を進めるようになりました
手刻みの現場などで得た木組みの知識で
最近では古民家の改修・再生の仕事させていただいてます
改修等はもっとも手刻みができる大工さんの腕の見せ所だと思います

4. 手仕事・手間をかけるということ
レフトハンズという事務所名にも「手」が入っていますが
空間つくりは 設計も施工も多くの人の手をかりて進むプロセスであり
その最初の手が設計者の手であり、建て主さんのもう一つの手となる――そんなイメージでつけました
家を建てるということは、建て主と一緒に考え
時間と労力をかけることを楽しみながら作るものでだと考えています
昔の家は、右官(木を扱う)や左官(土を扱う)など、職人たちの手仕事の集合体だったそうです
今の時代は いろんな手仕事を楽しむ人が多くなり
手間をかけることへの価値を理解・再認識する人が増えてきました
例えば、手間をかけて淹れるコーヒーや 天日干しでつくるお米など

5. 「手刻み」のこれから
手刻みという日本の技術を考える時に
手間をかけることへの価値を見出す人が増えてきていることは喜ばしいですが
大勢の人が気づくまではまだ時間を要します
その時まで 志が同じかもしれない人たちに伝えることはやめてはいけないと思います
私たちが設計する家のづくりの中、これからの活動の中で
次のことを実践・増やしていければと思います
木の構造を見せる空間
修理や修復がしやすい、木の架構の美しさを活かした家
木の大切につかうこと
木の特性を理解し その良さを生かすこと
時間をかける価値を知る
時間をかけて育った木と技術を介して、人と人との関係、人と物の関係ができる
ものづくりの現場での体験
人が物を作っている現場をまた自分で体感してもらう
完成した空間・建築の体感
手間の集積の空間の良さを、いろんなひとに感じてもらうこと