丹下健三の旧広島児童図書館 空間の魅力
大学の授業で「記憶に残る建築空間を挙げなさい」と聞かれたとき、
真っ先に思い浮かんだのは、子どもの頃に訪れた児童図書館でした。
周囲へ放射状に広がる書棚が印象的で、建物全体がまるで屋外にいるかのように明るく、開放感にあふれていました。
そのときの感覚は、今でも鮮明に覚えています。
広島で育った皆さんも、あの空間を記憶しているでしょうか。
そして、なぜ壊されてしまったのでしょう。
後になって、あの図書館が丹下健三の設計によるものだと知りました。
放射状に並ぶ書棚は空間を区切るためではなく、むしろ一体感を生むための工夫だったと理解したとき、あの空間に満ちていた軽やかさの理由が腑に落ちました。
そこでは、人々が自然に同じ時間を共有し、ゆるやかにつながっていたのです。
建築空間が与える印象は、形だけではありません。
その場所で過ごした時間、光のやわらかさ、空気の質が、静かに記憶として残ります。
この児童図書館のように、建物そのものが心地よさや楽しさをまとい、長く心にとどまる空間になること
それこそが、建築の魅力なのだと思います。