実家に住もう
no.01 はじまり
実家の改装を考えていたご夫婦が
ネット等で探し、問い合わせた工務店が
向原の現場を施工していただいてる工務店で
タイミングよく
現調に同行させていただきました
家を見学していただいたお題目
・対面キッチンにすること
・あったかい家にすること
古民家リノーベーションを近年手掛けていますが
木製建具がそのまま縁側に使われている家はありませんでした
初見で木製建具をこのまま残したいと思いました
家に伺ったときお母様が縁側に座られていたことも大きな理由です
施主様の家に望むことを確認するため
いろんなお話をさせていただきました
断熱・気密についてなどを説明
次回は間取りを書くことに
キッチンの位置をどこにするかから始めました
見学と間取り:大毛寺の家02
工務店さんの工事の予定もあり
今回はちょっと急いだ設計に
毎週土曜日の打合せの日々がはじまりました
工務店さんとはじめて仕事した向原の家の完了検査の日
現場見学の予定をいれさせていただきました
自分たちの家の工事がご縁で
設計事務所と工務店がタッグを組んで仕事することを
大変喜んでくださいました
民家の田の字プランのありかたは
どこも同じなので
見学していただくことにより
なんとでも設計できることを
感じていただけるとよいなと思っています
見学後間取りの打合せに
5案の図面をプレゼンして
住人となる3人の方にそれぞれご意見をいただきました
さらに打合せ後に工務店さんにもご意見もいただきました
どれが正解ということもないので
それぞれの意見をもとに次の間取りへ
使いたい家具があるとのことで見に行くことに
長さが一間半ある大きな水屋が
水屋により間取りがある程度固定されることとなりました
構造チェック:大毛寺の家03
間取りの中心となる
システムキッチンを見にショールームに
高さ・大きさ・水栓・換気扇・素材など
私はいつも付き添って行くのですが
空間のイメージを広げる役割と
コーディネーターさんと話されている間
施主さんがどんなことを考えられているか
聞き耳をたてております
午後からは
工務店さんにも加わっていただいて
間取りをさらに決めていきます
・玄関の位置にについて
お庭に面して南入りの玄関なのでリビングに光や景色をどう取り込むか
・大きな水屋の役割と位置
キッチン収納に日常使いの食器をいれて
本棚兼食器棚として別の場所で利用など
理解してうなずいていただきたいので
ガンガンと説明していきます
ほぼ間取りが決定とこで
建物の構造チェック
・天井裏
既存の梁や柱の状態をしって
構造の補強等をチェックします
また各部屋の高さについても検討します
・床下
床下の構造の状態・湿度の状態をチェックします
建物のあり方:大毛寺の家04
建物のありかた
空間の配置・構造・断熱・設備について
大きなものを決めて基本設計終了です
これからは実施設計に入ります
素材など細かく決めていきます
今回は床材のサンプルを持参
片付けの手伝いに来られるご家族にも見ていただくことに
基本設計最終日なので
いつもは一番最初に聞くことを
お尋ねさせていただきました
今回の改装にいたる経緯と改装に対する思いを
工事金額や断熱仕様だけ聞いただけでも家はできますが
こまかな判断を必要とするとき
コンセプトをいただけると
沢山の選択肢から物事を決めるときの
指針となると思うので
細かい寸法の採寸:大毛寺の家05
全てのものに大きさがあります
まずは大きな寸法からおさえて
徐々に細かな寸法に
厳密な寸法は大工さんが工事をするときに時に測られます
既存建具を使おうとして
使えないということがないように
計画が進んだ段階で細かな寸法調査をさせてもらいます
建て替え後も玄関正面に
使う予定の建具
高さ・厚さ・幅と素材を確認します
こちらの物入れ戸は
建て替え後
カーテン建具として使う予定
細かな寸法を測る頃には
自分が家になじんできています
空間全体を把握して設計できているかの確認も
同時並行で
いっぱいの左手:大毛寺の家06
レフトハンズの設計図の表紙は
住まれる方・家に関わる方の左手を
いつも使わせていただいてます
いっぱいの左手は
『実家に住もう』の出演者
・マンションの生活から実家を改装することにされた
『実家に住もう』の主人公ご夫婦
・実家以外に住んだことがなく
家のことを知り尽くした
生まれも育ちもこの家となるお母様
・この家で育ちお嫁にいかれた
お母様の妹さんのご夫婦
・限られた時間の中で
実家の改装前の荷物の片づけを手伝っておられる
長女さん・三女さんのご夫婦
・今春から熊本で大学生活の次女ご夫婦の息子さん
現在この設計図書による見積が
このお仕事をご紹介いただいた
工務店さんによって行われています
工事前の写真撮影:大毛寺の家07
設計図書にもとづいての見積が終わり
工事請負契約を結んで
工事が開始されます
本日改築前の最後日なので
現状を写真におさめさせてもらいました



母屋の工事に先行して
床をはりなおした土蔵のなかは
工事中は家財道具がいっぱいです
木造の骨組みの変更:大毛寺の家08
梁・柱を
新しくなる暮らしのかたちにあわせて
差し替え・架け替えていきます
北側部分は基礎ブロック工事から
全て取り換え
新しい柱を窓の納まりに合わせて入れていきます
在来木造住宅で使う柱は
105x105x3mが多いのですが
今回は束石の上から梁までの高さがあるので
120x120x4mで
家の真ん中を通る
メインの丸太梁を支える柱を2か所抜いたので
そのための補強の梁・柱工事
空間のつくりと構造のラインが重なるように
施主さんにも現場に入っていただき
再度窓の大きさの確認
思ったより大きい・小さいを調整して
建具の発注に
離れの間を残す:大毛寺の家09
工事中の離れの間からお庭を見る
はじめて家を訪れた時
木製建具がはいった縁側と
縁側から一回外に出ていくWCと
2畳小さな布団小屋に惹かれました
お施主さんは解体・減築の予定でおられたようですが
減築でも費用がかかるので
同じ費用で離れの間として再生されてはと提案
受け入れていただきました
お施主さんとの会話の中で
コロナのなかの生活で
『一日ソファーに座っていた日がありました』
『マンションでの生活の限界を感じた』
という言葉が耳に残りました
こちらの家には庭に畑とありますが
家の中で日常から抜け出る余分の間として
読書・昼寝などなど
共同生活のなかでの
リフレッシュスペースになればよいと思います
離れの間から見えるのは
一番大きく長く生きている樹木と
植木屋さんのデザインによる
アイスクリームの木
お庭にはさらにはカメもいます
素材について:大毛寺の家10
◇既存住宅に使用されていた素材をつかう
厚鴨居を削っていただいて
既存木建を使用する場所に移設して利用します
釘の跡などありますが
家の歴史と思えば気になるものではありません
(写真:小又工務店)
削る前の厚鴨居はこの部分に
◇外壁には中国山地でとれた杉材をつかう
軒がしっかりと出ている建物なので
外壁材には杉板を使用
工務店さんの仕事場で貼る前に塗装していただいてます
◇工務店倉庫からの掘り出し物をつかう
工務店さんが保管されていた材料のなかから
今回の工事にあうカウンター材を選んでいただきました
実物を見に行かせていただき決定
材料の木の名前がわからないのは残念ですが
◇サンプルを取り寄せて素材を選んでつかう
カタログから選んでもっていたタイル
サンプルを取り寄せて
現物を施主の方に見ていただき決めてもらいました
建て主と現場で最終チェック:大毛寺の家11
計画した間取りにあわせて柱をいれて
床組をしてみると
設計を変更すべき場所が何か所か
現場にてお施主さんに説明了解いただきました
* * *
既存柱の間の部分にFIXのガラスを入れる予定でしたが
蔵から出てきた写真の建具をはめ込むことに
床組の高さから現場にて
体感していただきながら
カウンターの高さを決定
補強に入れた梁を側面を意匠的に見せることに
キッチン収納の長さ2730が
既存柱間では取れないので
新設柱を少しずらして設置
北側の下屋部分の天井高さが低いので
北側にある部屋の
天井の形状および仕上げを変更させていただきました
外壁工事(杉板):大毛寺の家12
杉板を塗装した外壁
杉板自体の赤み・白みが見えて美しい
私が今年育てたライ麦の茎のよう
できるだけ土壁部分は残し
中途半端に改装されていた部分は取り壊し
どちらも構造用合板で覆う
その上から断熱材を留め
タイベックシートの上胴縁
最後にお化粧の杉板
お施主さんと決めた
プラネットカラーの
グリニッシュグレー壁ができあがり
軒の取り合い部分も
きれいに施工されています
外壁工事(玄関まわり):大毛寺の家13
玄関まわりの外壁工事の木下地が出来上がりました
塗り壁にするので
木すり板をはっていきます
工事が始まる2か月前までの玄関
懐かしく感じます
現場に伺った時からから
アルミサッシの付け方に違和感があり
今のデザインとなりました
今回の改装では
壁を付加して
アルミサッシが奥にある表現にしています
アルミサッシ自体の性能は素晴らしいのですが
木製の建具と並ぶとべちゃっと壁につけてしまうと味気ないので
いよいよ塗り壁の素材の決定
遠くから見ながら
施主の方と一緒に決めました
塗り壁が地面につく部分も
既存の犬走に使ってあった石を移設利用しています
壁の仕上がりが楽しみです
天井下地工事:大毛寺の家14
北側の部屋から
天井の下地工事が始まりました
解体工事をしてから修正して
設計段階と少し形状を変更しています
寝室の天井には断熱材も敷きこまれました
屋根材の葺き替えを行わないので
断熱ラインは一択
天井断熱です
居間からキッチンにかけての天井
下地を見ただけでもワクワクしてきます
格子に組んである下地に
天井の仕上げをはっていきます
玄関及び居間の天井は
はじめて試みることばかりで
大工さんとつくり方を話し合ってます
既存和室の欄間から
居間の天井を見る
居間の南側のアルミサッシに向けての
天井の下地です
天井の仕上げ①:大毛寺の家15
天井の下地組が終わると
その上に断熱材を敷き込み
気密シートを貼って
最後に化粧の仕上げ材をはります
玄関の杉板張りの予定でしたので
天井の一部を
工務店さんにお願いして
アール天井にしていただきました
玄関の扉が入っていないので
額縁効果でアプローチがきれいに見えます
床の仕上げとメンテナンス:大毛寺の家16
設計段階で決めた
厚みが20ミリあるボルドーパインの床板
オイル塗装仕上げ
現場の床に施工がされました
床の色味を現場で見ながら
キッチン・壁の色などを決めていきました
下地の合板はつなぎ目をテープでとめて
空気が上がらないように
手を入れずに残すことになっている縁側ですが
歩く部分だけ
塗装がはげてきているので
塗装を削り落としてもらって再塗装
少し色をつけてもらいます
キッチン登場:大毛寺の家17
家の中心に
今回の改装の主役のキッチン登場
対面式のキッチンを使って
一部加工して
ガスレンジ部分は見えないように
(改装なので柱をとることができない部分がありまして)
キッチン収納部分の上部にはタイルを張ります
外壁工事(塗り壁):大毛寺の家18
外壁工事(玄関まわり)の続き
塗り壁仕上げ材を塗る準備の続きで
ルーフィングとラスを貼る
クラック防止のため
グラスファイバーをはりこみ
下塗り材を塗る
一気に仕上げ材を塗り込んでいく
その後
プラスチック鏝で押さえる
表情を決めるために
工務店さん・お施主さん・設計士で見守る
角は落としてもらい丸く
垂木との取り合いもきれいに塗り上げられました
できあがりが楽しみです
天井の仕上げ②:大毛寺の家19
リビング天井の仕上げ
下地となる板も見えるため
仕上げを決めて
下地板を割りつける
塗装したラワンべニア板(正方形)
板目を縦横と交互に貼ってもらう
正方形のぶつかる部分に
ケヤキのお化粧板を設置
ケヤキのお化粧板を
壁にも設置してみました
塗り壁に何か飾る時のために
お庭との関係:大毛寺の家20
雨が降ったあとのお庭
緑がとてもきれいです
改築工事中のだけの風景ですが
この家の本質
* * *
和室と縁側とお庭
光を取り入れる方向には
緑のお庭が見えます
建具アップサイクル:大毛寺の家21
アップサイクルとは
サスティナブル(持続可能)なモノづくりの方法
創造的再利用
改築自体ももちろんアップサイクルですが
アッという建具のアップサイクルをお届けします
まずは洗面所の収納に使われている扉は
布団部屋に使われていたガラスの建具
玄関横のシューズクロゼットの扉は
離れに設けられていたWCの扉です

既存住宅でも玄関入ってすぐの扉として使われていました
前家の面影を残すため玄関の同じ位置に
寝室の押し入れに使われていた引き戸
カーテン代わりに利用しています
玄関わきの縁側に通じる扉
普段は使わないので忘れ去られていた存在
別棟への入り口として利用
開き戸から上吊りの引き戸に
家の中でつかわれ時を経てきた
無垢の木でできたじ建具たちを
新しい空間のなかで再利用してみました
完了検査・取り扱い説明と見学会:大毛寺の家22
先週の土曜日は
午前中から完了検査をしながら
これからのために
設計者の意図をお伝えする
取り扱い説明を行いました
これからは施主さんが空間を育ててくれることでしょう
午後からは身内へのお披露目会兼見学会
工事にかかわった
施主・工務店・設計者の家族・友人・知人たちに
家を見てもらいました
設計者の代わりに見学に来られた方に
お施主さんが説明されているのを見て
うんうんとうなずく設計者でした
家具の準備:大毛寺の家23
改築を始める前・改築中に
イメージを共有するために
家のポイントとなる家具や薪ストーブなどを
施主の方と一緒に決めることがあります
今回の設計のポイントはお持ちの家具の配置でした
予定をしていなかったのですか
何度か意見を求められたので
一緒にショールームに行ってみました
ショールームの方のアドバイスは
家具そのものについて
家具が置かれる空間については
理解するのは困難なご様子
座ることだけなのか
ほかの使い方をするのか
他の空間とのつながりは
たくさん選択することがあります
ひとつ候補を決めて生地をもって帰りました
生地の色も光によって見え方が変わります
ソファーや家具が入った空間を見るのが楽しみです
引っ越し:大毛寺の家24
お引越しをされた本日から
『実家に住もう』は『実家に住まう』へ
お施主さんの物語となっていきます
床板を合わせた
コントラバスも先に運び込まれました
障子にコントラバスの姿から
和洋折衷の家を考えながら設計・施工してきました
改装後の家にも同じ風景を
どうぞ生活しながら
空間を育てていってください
いろいろ気づいたことありましたら
お知らせください