生きるぼくら

先週紹介した
「むらの原理 都市の原理」をわかりやすく
むらの部分の良いところだけを物語にしている小説でした
作者原田マハさんの言葉をかりたら
「お米をめぐる、とっておきの物語。おれの、ぼくらの、わくわくするような物語」
お米は作ったことはないけれど
ここ伴東で畑をかりて麦をつくっていると体感する良い部分が
言葉になって理解できました
私が小説家だったら
「家をめぐる、とっておきの物語。おれの、ぼくらの、わくわくするような物語」
を書けるのにとおもいますが
できないので
設計士としてひとつの家に対してとっておきの物語を仕上げたいと思います
2022/01/24
むらの原理 都市の原理

年末本棚の整理をしている時に久々に手にした本
なんとなく読み始めると
最近、設計の仕事や麦つくりの中で日々考えている
もやもやとした境界線がスッキリとしました
むらの原理と都市の原理を理解することで
今自分が住んでいる環境を
どちらの物差しでも見ることができて
よりよく理解できる気がしてきました
「むらは扶助と義務とで成り立つ自立の社会であり
都市は権利と管理で成り立つ分業の社会」
私は広島市郊外の昭和40年代に造成された住宅団地で育ち
都市で暮らすための教育を受けてきました
社会の一員として分業の一役を担っているのでしょう
戦後むらから人を吸収して都市は広がり
都市のルールでむらについても考える時代が続いて
そのなかで育って生活してきたのでしょう
むらでは
山の木で火を焚き
自然から水を得て
田畑で野菜・米などを作る時
一戸の家は自立できます
都市では
分業をこなし
給料を得て
それを元手にすべてを買うことができます
全てに価格がつけられています
私が最近設計で関わった広島市近郊の農家はむらの原理でできたもの
自立するための設備をいつでも備えることができますが
都市の原理で生活することもできます
私が伴東で耕作している麦畑周辺は
都市化によって地力の持っている土地が
地辺となり売り出されていきます
自立する家をつくることは難しい状況です
TVで見た
農家をシェアハウスにして
都市からちょっと逃げ出したい若者たちが集まっている状態
そこでむらの原理を知ることで
一人の人間の自立に必要なことを知れば
むらでも都市でも生活する場所をみつけ出せるのでしょう
人が自然と共生して
むらと都市を理解し
どちらも成立させていけばよいと思います
最後に
町内会というのは
むら的な扶助の考えを残して都市のなかにあります
もう少し都市になじむように
働きと名前を変更させた方が良いと思いますが
みなさんいかがでしょうか
2022/01/18
「暮らしが買えると思うなよ」

『みんなでつくる中国山地』
002暮らし
100年出版する予定の2年目の本
定価2,640円
***
表紙に書いてある内容を読むだけで
編集者の熱意が伝わってくる
ここ数年の活動
設計士の仕事として古民家の改装
麦を畑でつくる作業
山で木を切る作業を通して
この本に書いてある内容を体感してきた
体感できない方はこの本を読んでほしい
***
中国山地には豊かな生活が今も残っており
それらに今気づけば
次の世代に残していけるのでは
***
街と山が近いのも中国地方の良さ
どちらの生活も享受することができる
すごい贅沢な時代を生きていることに気づくと視点が変わる
***
この本にに書いてあるように
住宅相談会に行ってもお金のこと、メーカーのことを
教えてくれるけど
『暮らし』については教えてくれない
家は手に入るけれど
暮らしは自分たちでつくるもの
それも時間をかけて
そのはじまりのお手伝いをレフトハンズはしています
2021/12/09
corippo<時間を忘れた村>

ノルウェーのユースホステルでしりあった
マーガッレットの先祖が住んでいた村
コリッポを訪ねた時の強烈な思い出から
日本に帰ってこの本を探しました
***
バスを降りる場所を一つ間違えて
そこから村に至る山道で見た
石と自然の造形
コリッポに到着したとき
ほぼすべてのものが石つくり
家が土地から生えてきたよう
近くのもので環境をつくる洗礼を受けました
***
最近、木を使うこと、木の良さを説明しなければいけないようですが
近くのもので自分たちの環境をつくることに反対の人はいるのでしょうか
2021/12/01
どちらへ進むのか?

アレックス・カー 美しき日本の残像から
「人類が宇宙に住む時代が来たら、日本人は一番スムーズに宇宙の生活になれるでしょう。
その理由は宇宙には木、草、鳥、動物、美術、文化的な街並みなどがないからです。
宇宙船の中、あるい月の上の植民基地はアルミと蛍光灯の世界です。
他の国の人たちは時々自然の森や生まれ故郷の美しい街並みを思いだして、地球に帰りたくなる。
けれども、日本人は日本を思い出してもアルミサッシ、蛍光灯、空に聳える鉄塔、
コンクリートとガラスの町しか思い浮かばないので、月での生活とそう変わらないはずです」
花鳥風月をめでる日本の文化と家があります
しかし、テレビで宣伝されている家たちは車のよう
どちらへ日本が進むのか
どちらにも極められる法でありつづければよいですが
photo:南フランス・モンテリマーレ・夕食時のレストラン
2021/11/26
いえづくりしながら考えたこと

build yourself with selfbuild
久しぶりに読んでみました
消費社会・分業社会から抜け出して
自分のhomeをつくられた方の本
セルフビルドは無理だとしても
家を自分で考えることが重要だとやはり思います
本文から
「効率よく生産された製品に囲まれる生活よりも、よろこびから生まれた物と向き合う生活の方が豊かといえないだろうか」
2021/11/25
呼吸(いき)する環境

この空間がなぜか落ち着く
この空間が好きだ
この空間が快適だと思ったら
どうしてそう思うのかを解明してくれる本です
自分とそれを取り巻く環境をどのように見るのかの
視点を与えてくれます
身近な環境を理解し変えていくことができると
そのパワーは
街・国を変えていくことになるのではと
2021/11/11
スロー・イズ・ビューティフル

この本で使われるスローは
エコロジカルやサステナブルを
詩的にわかりやすく表現したもの
2001年発刊当初読んで頭だけで理解していたものが
最近の山作業や畑作業
建築設計の仕事で体感しつつある
畑を手作業ですることの美しさを感じる
効率化とは違う方向で何かを成長させている
成長を急ぐ時代はすっかりおわり
次はゆったり何をしようかと考えている方におすすめです
2021/11/10
空間の再読

姪っ子が大学で建築を勉強し始めて
時々話をしていると
自分が大学で勉強したことを思い返すことが最近多々あります
知っている空間を思い返すことと同時に
もう一度情報にアクセスしていると
やっと理解できることもたくさんあります
本の再読をすると
よりディテールが理解できるように
実に面白い
2021/09/06
炉辺の風おと

20年以上前
梨木香歩さんの本を愛読していた
「西の魔女が死んだ」
「からくりからくさ」
「裏庭」など
久々に手に取ったエッセイ集
山小屋での生活の中で書かれたもの
作家さんが空間を見る視線
感じられていることがすべて理解できる
その感覚で書かれた本だから好きだったのだ
* * *
本文から
『このことに気づくと気づかないとでは生活の張り合いのようなものがだいぶ違ってくる気がする。他の生命と共生しているという「感覚」が、頭の中のものでなく、目の前の空気を伝わって自分の存在の真芯に響いてくる。』
趣味で山に入って木を切っている時の感覚がこの言葉にぴったりと当てはまる
* * *
建築の言葉たちで図面を書き人々の生活を作り上げることが楽しく感じてくる
2021/07/21